ホリエモン数


初めてこの言葉を知ったときはかなり笑えました。 (少なくとも数学者には) 有名なエルデシュ数をもじった言葉だと思われます。 エルデシュ数とは、次で定義される数です。

1. エルデシュ本人にはエルデシュ数 0 を与える。
2. エルデシュと共著論文がある者にはエルデシュ数 1 を与える。
3. 以下、帰納的にエルデシュ数を与える。すなわち、 エルデシュ数が n 以下ではなく、 かつエルデシュ数 n の者と共著論文がある者にはエルデシュ数 n+1 を与える。
4. 以上のルールでエルデシュ数が与えられない者には、エルデシュ数 ∞ を与える。

もしくは以下の説明の方が分かりやすいかもしれません。

人を点で表し、共著がある者同士を線で結ぶ。 エルデシュから出発して何本の線を辿ればその人物に辿り着くか、 その本数の最小値をエルデシュ数と呼ぶ。

ちなみに、私のエルデシュ数は4です。パスは次の通りです。

P. Erdos --(MR0535395)-- A. M. Odlyzko --(MR0824360)-- D. Zagier --(MR1908876)-- Y. Ohno --(MR2299789)-- T. Goto

エルデシュ数4は非常に平凡です。 2以下は貴重ですし、6以上となるとかえって珍しいです。 ただし、数学者でも共著が無い人は結構多く、∞は珍しくありません。 任意の数学者間の距離は MathSciNet で調べることができます。 ただし、AMS と契約していないと使うことはできません。 主要な大学内の計算機ならば使うことができるでしょう。

実はエルデシュ数に大した意味はありません。 上記のような、点と線で表された図形を数学用語で「グラフ」といいますが、 エルデシュがグラフ理論の専門家であったことと、 エルデシュの共著が非常に多いことから、 彼の友人がユーモアを交えて定義したものと言われています。
それで、ホリエモン数とは、次のように定義される数だそうです。

1. ホリエモン本人にはホリエモン数 0 を与える。
2. ホリエモンと親交がある者にはホリエモン数 1 を与える。
3. 以下、帰納的にホリエモン数を与える。すなわち、 ホリエモン数が n 以下ではなく、 かつホリエモン数 n の者と親交がある者にはホリエモン数 n+1 を与える。
4. 以上のルールでホリエモン数が与えられない者には、ホリエモン数 ∞ を与える。

なぜホリエモンなのでしょうね。そこが笑えます。 以前、同僚の先生と、何人の知合いを辿れば総理大臣に行き着くだろうか、 という議論 (与太話) をしたことがありますが、 総理大臣よりはホリエモンの方がくだけた感じでよいかもしれません。 しかし、ホリエモン数 ∞ って、宇宙人くらいしかあり得ないのではないでしょうか。 まあ、あらゆる例外を許さず定義する、という所が数学っぽくてよい感じです。
似たものに、ケビン・ベーコン数なるものもあるそうです。

1. ケビン・ベーコン本人にはケビン・ベーコン数 0 を与える。
2. ケビン・ベーコンと共演の映画がある者にはケビン・ベーコン数 1 を与える。
3. 以下、帰納的にケビン・ベーコン数を与える。すなわち、 ケビン・ベーコン数が n 以下ではなく、 かつケビン・ベーコン数 n の者と共演の映画がある者にはケビン・ベーコン数 n+1 を与える。
4. 以上のルールでケビン・ベーコン数が与えられない者には、 ケビン・ベーコン数 ∞ を与える。

主な俳優のケビン・ベーコン数を調べることのできるサイトがあるそうです。 興味のある方は探して遊んで下さい。
これらの概念の背景には、「スモール・ワールド」という言葉があるようです。 これは、意訳すれば「世間は狭い」ということであり、 社会科学者による、「任意の二人は少数の知人を介して繋がっている」 という仮説を指すようです。興味のある方は Wikipedia「スモール・ワールド現象」 を参照して下さい。

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