音階について


このページの内容は、音楽について全く素人の私 (後藤) が音楽の本を読んで自分なりに再構成したものです。

ピタゴラス音階

ピタゴラスは弦の長さの比が簡単な整数比のときに、 発する音がよく調和することに注目しました (ただし、 弦の素材、太さ、張る強さなど、長さ以外の条件が同じとします)。 ド、ファ、ソ、 の音はその条件に合致します (このページでの約束として、上線は1オクターブ高いことを表すものとします)。 ドとは 2:1、 ドとソは 3:2、ドとファは 4:3 であって、考え得る限り簡単な整数比です。 発する音の振動数は弦の長さに反比例し、 弦が短いほど振動数は大きくなり高い音となります。 以上をまとめると、これら四つの音は次のような関係にあります。

弦の長さの比振動数比
21
ファ3/24/3
4/33/2
12

3/2 は 1 と 2 の相加平均、4/3 は調和平均であることが数学的に面白いと思います。
ところで、基音である「ド」をどう選ぶのか気になる方がいるかもしれません。 どのように選んでも音の調和は変わらないようですが、 今日では約 260Hz の音を「ド」とするそうです (注1)。 ピタゴラスは弦の長さで考察したでしょうが、 以後は振動数を基準にして話を進めます。 さて、音楽を奏でるにはもう少し多様な音が必要でしょう。 しかし、振動数が 1:2 では同じ音に聞こえるので、次に簡単な 2:3 に注目することにします。 ドとソのように、振動数比が 2:3 の関係を完全5度と呼びます (注2)。 ドの振動数を 1、ソの振動数を 3/2 とすると、 ソと完全5度の関係にある音は振動数が 9/4 ですが、 これはよりも高い音なので、 1オクターブ下げて振動数を 9/8 とします。これを「レ」の音と定めます。 次に、レと完全5度の関係にある音 (振動数 27/16) を「ラ」と定めます。 これを繰り返して、次を得ます。

振動数比振動数(Hz)
1260.7
9/8293.3
81/64330
ファ4/3347.7
3/2391.1
27/16440
243/128495
2521.5

この表を良く見ると、隣り合った音は (×9/8) と (×256/243) の二通りがあることが分かります。実際、ミとファ、 シとのみが (×256/243) で、他は全て (×9/8) です。 そこで、ミとファ、シとの関係は半音と呼び、それ以外は全音と呼びます (数学的にきっちり「半分」という訳ではないが)。 次に、ピアノの黒鍵に対応する音も定めましょう。 シと完全5度の関係にある音を1オクターブ下げて、 振動数 729/512 の音を「ファ#」と定めます。 これを繰り返して、次を得ます。

振動数比振動数(Hz)
1260.7
ド#3^7/2^11278.4
3^2/2^3293.3
レ#3^9/2^14313.2
3^4/2^6330
ミ#3^11/2^17
ファ2^2/3347.7
ファ#3^6/2^9371.2
3/2391.1
ソ#3^8/2^12417.7
3^3/2^4440
ラ#3^10/2^15469.9
3^5/2^7495
シ#3^12/2^18
2521.5

このうち、「ミ#」と「シ#」は通常使わないので振動数は省きました。 この二つを除けば、隣り合う音の振動数比は、2^8/3^5(=1.053…) または 3^7/2^11(=1.067…) になっています。 どちらの関係も半音と呼びます。 この音階の欠点は、
(1) 半音の関係が二通りあること。
(2) 振動数比が複雑であるため、きれいに調和しないこと。
の二つです。この二つの欠点を同時に克服することはできませんが、 どちらか一方を改善することによって、 次に述べる平均律、純正律を得ます。

(注1) より正確には 440Hz の音を「ラ」とする、 というのが今日の標準のようです。このとき「ド」の音が何Hz になるかは、以後説明する平均律、 純正律のいずれを採用するかによって微妙に異なります。
(注2) 完全5度の 5 とは、ドレミファソの 5 だと理解しています。 同様に、ドとの関係は完全8度、 ドとファの関係は完全4度と呼びます。「完全」とは、 非常に良く調和する、という意味合いでしょう。

平均律

平均律とは、半音の関係を一律 (振動数比 2 の十二乗根=1.059…) に平均化したものです。振動数は以下のようになります。

振動数比振動数(Hz)
1261.6
ド#2^(1/12)277.2
2^(2/12)293.7
レ#2^(3/12)311.1
2^(4/12)329.6
ファ2^(5/12)349.2
ファ#2^(6/12)370.0
2^(7/12)392.0
ソ#2^(8/12)415.3
2^(9/12)440
ラ#2^(10/12)466.2
2^(11/12)493.9
2523.3

ピタゴラス音階と比べても各音の振動数はほぼ一致します。 振動数比は無理数なのできれいに調和しませんが、 どの音を基音にしても同じように響くため、 変調に向いているという利点があります。 ピアノは平均律で調律されています。

純正律

ドとミのように全音2つの関係を長3度と言います。 ピタゴラス音階によれば長3度の振動数比は 81/64(=1.26…) ですが、 少し調整して 5/4(=1.25) としたものを自然長3度と呼びます。 この比を用いて調整すると次の表を得ます。 振動数は全てきれいに割り切れます。 例えば、ドミソは振動数比が 4:5:6 となり、美しい和音となります。 半音の関係は (×16/15) で、全音の関係は (×9/8) と (×10/9) の二通りあります。

振動数比振動数(Hz)
1264
9/8297
5/4330
ファ4/3352
3/2396
5/3440
15/8495
2528

長3度と自然長3度の差はシントニックコンマと呼ばれ、 様々な問題を引き起こします。 全音の振動数比は 9/8 と 10/9 の二通りあるため、変調には向きません。 純正律では、上のそれぞれの音に#(シャープ)とb(フラット)の音が用意されます。 このように多くの音が必要なのは、 変調したときになるべく違和感を感じさせないためと思われます。 また、ピアノなどが純正律を採用しないのは、鍵盤の個数が多くなり過ぎるからでしょう。

振動数(Hz)振動数(Hz)
264 ソb380
ド#275 396
レb285 ソ#412
297 ラb422
レ#309 440
ミb317 ラ#458
330 シb475
ファb338 495
ミ#344 b 507
ファ352 シ#516
ファ#367 528


まあ、音楽家の方は知識として知っていても、 このような理屈っぽいことを常に考えておられるわけではないでしょう。 感性が最も大事なのだろうな、 と自分に無いものに対して一種の憧れを抱いています。

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