``On the apporximation of blow-up time for solutions of nonlinear parabolic equations'',
PhD Thesis, Univ. of Tokyo, 1999. (To appear in Publ. RIMS)
要約: 本論文では,爆発現象を有する方程式を何らかの方法で近似した場合,そ
の近似方程式によって爆発現象がどこまで再現できるのかという問題を
考察した.本論文では特に,爆発時刻に焦点をあて,解が爆発する時刻
が近似問題の解析によってどこまで正確にとらえられるかを探り,近似問
題の爆発時刻の,元の問題の爆発時刻への収束性をかなり一般的な枠組の
中で論じた.さらに,この結果をいくつかの具体的な問題に対して応用し
た.具体例として取り上げた問題は,一般化された曲率流(準線形放物型
方程式)と幾つかの半線形放物型方程式( ,非線
形項は
) である.
``A crystalline motion of spiral-shaped curves with symmetry''
(J. Math. Anal. Appl. 240, pp. 115-127, 1999 ).
要約: 本論文は論文[]を発展させたものである.[
]では渦状折れ線のクリスタ
ライン曲率による運動を論じたが,そこで得られた結果はそのような渦状
折れ線解の局所的な一意存在性であった.本論文では
ある種の対称性のある曲線に初期値のクラスを限定した上で,
この問題の解の時間大域的な存在と漸近挙動を
明らかにした.また論文[
]で構築した数値スキームを応用してこの問題
に対する数値実験を行なった.
``Convergence of a Crystalline Algorithm for the Motion of a Closed Convex Curve by a Power of Curvature'',
(Gakuto International Series, Mathematical Sciences and Applications, volume 12, Advances in Numerical Mathematics; Proceedings of the Fourth Japan-China Joint Seminar on Numerical Mathematics, Edited by H. Kawarada, M. Nakamura and Z. SHi. pp. 261-270, 1999, Gakkou-tosyo, Tokyo).
要約: 本論文は論文[]を発展させたものである.論文[
]では到る所で曲率正で
ある閉曲線の一般化された曲率流による運動に対する,クリスタライン・
アルゴリズムによる数値計算スキームを扱った.本論文では,閉曲線の曲
率が必ずしも正でない場合への数値スキームの拡張,および,異方
性を含むようなより一般化された問題に対する拡張を論じた.さらに,我々
の数値スキームの持つ様々な良い性質について解説した.
``Convergence of a Crystalline Algorithm for the Motion of a Closed
Convex Curve by a Power of Curvature
'',
(SIAM J. Numer. Anal. 37, No.2, pp. 500-522, 2000).
要約:本論文では一般化された曲率流に対するクリスタライン・アルゴリズムに よる数値計算スキームの構築とそのスキームの収束性について論じた.こ こで一般化された曲率流とは,平面閉曲線が曲率の冪乗に比例した法線方 向速度で運動する問題のことをいう.また,クリスタライン・アルゴリズ ムとは,曲線をクリスタライン運動と呼ばれるある特別な運動をする折れ 線によって近似し,曲率をクリスタライン曲率と呼ばれる量(折れ線に対 して一般化された曲率)で近似することによって得られる近似アルゴリズ ムである.我々は閉曲線の曲率が到る所正の場合に,一般化された曲率流 に対する数値スキームを構築し,スキームの解の元の問題の解への収束性 を示した.
``Motion of Spirals by Crystalline Curvature'',
(Math. Model. and Numer. Anal. 33, pp. 797-806, 1999).
要約: 本論文では渦状折れ線のクリスタライン曲率による時間発展を論じた.鉱 物などの結晶上に,渦状のパターンが観測されることが知られている.ま たその渦状パターンはその曲率によって時間発展することも知られている. この論文ではこのような現象に対する最初のアプローチとして,クリスタ ライン曲率によって運動する渦状の折れ線を考察した.我々のモデル方程 式は無限次元の常微分方程式系によって記述される.我々はこの方程式系 の初期値問題の一意可解性を示すとともに,このモデル方程式を用いた数 値実験を行なった.
``On the convergence of blow-up time of some numerical schemes for nonlinear parabolic equations'',
(投稿中).
要約:論文[]では爆発問題の近似問題として,時間方向には連続
なものを考察した.本論文では,爆発現象の数値計算
という観点から,時間方向も
離散化した近似問題(数値スキーム)を取り扱った.
[
]の主結果(爆発時刻の収束性)を数値
スキームに対するものに拡張し,幾つかの具体的な爆
発問題に対して爆発時刻
の収束性が成立するような数値スキームを構築した.
``Implicit crystalline algorithm for an area-preserving motion of immersed convex curves by curvature'',
(投稿中).
要約:面積保存の曲率流(平面内の曲線が,その曲線が囲む面積が一定という制
約下で曲線の長さを
最も減らす方向に運動する問題)に対する一つの数値解法を提案した.
我々の
数値解法は,論文[]および[
]で扱ったクリスタ
ライン・アルゴリズ
ムによるもので,時間方向の離散化をうまく行うことで厳密に面積の保存
が成立するようなスキームを構築することに成功した.また,この数値計
算法を用いて行った数値実験により幾つかの知見が得られたのでそれにつ
いても併せて述べた.